計算方法の解説

このツールがどのように確率を推定しているかの数理的な説明

前提: JRAのオッズの仕組み

JRAの馬券はパリミュチュエル方式(投票プール方式)を採用しています。 ブックメーカーのように事前にオッズが固定されるのではなく、全ての購入者の投票総額からオッズが決まります。

仕組み: 全購入者の投票総額から、まずJRAが控除率(テラ銭)を差し引きます。 残りを的中者で山分けするため、オッズは「その馬券にどれだけの人が賭けたか」で決まります。

控除率: 馬券種によって異なります。

馬券種控除率払戻率
単勝・複勝20%80%
馬連・ワイド22.5%77.5%
3連複25%75%
3連単27.5%72.5%

つまり3連複の場合、全ての組み合わせを均等に買うと必ず75%しか返ってこない設計です。 これがこのツールの「75%の壁」の正体です。

オッズの意味: オッズは「市場参加者の集合知」です。 過去成績・血統・調教タイム・天候・馬場状態・騎手の力量など、あらゆる公開情報を 市場参加者が自分の資金を使って評価した結果がオッズに反映されています。 これが後述する「市場効率仮説」の根拠です。

仕組みの概要

1. 2種類のオッズから確率を推定

単勝オッズ複勝オッズの2種類を使います。 単勝オッズはその馬が1着になる確率を、複勝オッズは3着以内に来る確率を反映しています。

2. 2つのモデルのズレからバリューを見つける

3連複のオッズ推定には単勝ベースの市場モデルを、 的中確率の推定には複勝ベースの確率モデルを使います。 この2つのモデルのズレが大きい組み合わせほど、相対的に有利な買い目です。

3. 確率順にランク付け

全ての組み合わせを的中確率の高い順にランク付けします。 バックテストでは、上位3通りで21%、上位10通りで39%の的中率を確認しています。 購入点数を増やすと的中率は上がりますが、1点あたりの回収率は下がります。

なぜ2つのオッズを使うのか?

もし単勝オッズだけで「確率」も「オッズ」も推定すると、回収率は数学的に必ず75%に固定されます。 確率とオッズが同じデータから出ているので、計算中に打ち消し合ってしまうのです (詳細は考察ページを参照)。

これを避けるために、オッズの推定には単勝確率の推定には複勝という別々のデータソースを使います。 単勝は「1着確率」、複勝は「3着以内確率」を反映しており、 この2つの市場の評価のズレが組み合わせごとの回収率の差を生み出します。

具体例で理解する

14頭立てのレースで、馬A・B・Cの3頭に注目した場合の計算例です。

単勝オッズ推定勝率複勝オッズ推定3着内率
馬A(1番人気)3.5倍22.9%1.3〜1.8倍51.6%
馬B(3番人気)8.0倍10.0%2.0〜3.5倍29.1%
馬C(8番人気)25.0倍3.2%4.0〜8.0倍13.3%

推定勝率の計算: 馬Aの場合、0.8 / 3.5 = 22.9%(0.8は単勝の払戻率80%)

推定3着内率の計算: 馬Aの場合、0.8 / ((1.3 + 1.8) / 2) = 0.8 / 1.55 = 51.6%

注目ポイント: 馬Cは単勝オッズ25倍(勝率3.2%)ですが、 複勝オッズでは3着以内確率13.3%と評価されています。 この「単勝での評価と複勝での評価のズレ」が組み合わせの回収率に影響します。

計算方法の詳細

レースデータをインポートすると、選択中の馬(3頭以上)から全ての3連複の組み合わせを自動計算します。 1買い目あたりの掛け金は100円として計算しています。

1. 単勝オッズから各馬の勝率を推定(市場モデル用)

  • 番の馬の推定勝率
  • 番の馬の単勝オッズ
  • 0.8は単勝市場の払戻率80%を表します。

2. 複勝オッズから各馬の3着以内確率を推定(確率モデル用)

  • 番の馬の推定3着以内確率
  • 複勝オッズは範囲(低〜高)で提供されるため、中央値を使用します。

3. 正規化と市場モデル(3連複オッズの推定)

勝率・3着以内確率のそれぞれを正規化し、合計が1になるようにします。

市場モデル(単勝ベース)で3連複のオッズを推定します。

  • :正規化後の市場モデル確率
  • :推定3連複オッズ(0.75は3連複の払戻率75%)

4. 確率モデル(複勝ベースの的中確率)

複勝確率ベースの3連複の的中確率を推定します。

ポイントは、オッズの推定(市場モデル)と的中確率の推定(確率モデル)に異なる確率を使っていることです。 市場モデルは単勝オッズから、確率モデルは複勝オッズから導出しています。

期待回収率とランク付け

5. 各組み合わせの期待回収率

期待回収率は「100円を掛けた場合に平均で何円返ってくるか」を示します。 100%なら損益分岐点です。

  • 期待回収率 100%以上 → 緑色で表示
  • 期待回収率 100%未満 → 赤色で表示

6. 確率順ランク付け

全ての組み合わせを的中確率 の高い順にランク付けします。 バックテスト(774レース)での検証結果:

  • 的中した組み合わせの中央順位は16位(全体の約4%の位置)
  • 上位3通りで21.3%、上位10通りで39.1%の的中率
  • ランダム選択と比較して26〜38倍の精度

補足: 複勝オッズがない場合(Harvilleモデル)

複勝オッズが取得できないレースでは、単勝オッズのみでフォールバック計算を行います。 オッズの推定には単純積モデルを、 確率の推定にはHarvilleモデル(条件付き確率)を使います。

Harvilleモデルは「1着が決まるとその馬はプールから消え、残りの馬で2着を争う」という過程を条件付き確率で表現します。

特定の着順(1着=, 2着=, 3着=)の確率:

3連複は順不同なので、6つの順列の合計を取ります:

この計算方法で774レースを検証した結果は検証ページで確認できます。なぜこのモデルで利益が出ないのかの理論的背景は考察ページで解説しています。